電気主任技術者の資格を持っている方なら、一度は「独立」という二文字が頭をよぎったことがあるのではないでしょうか。「独立すれば年収1000万円も夢ではない」という話を耳にして、期待に胸を膨らませている方もいるかもしれません。

しかし同時に、本当にそんなに稼げるのか、安定して仕事はあるのかといった不安も尽きないものです。この記事では、電気主任技術者が独立した場合のリアルな収支や、高収入を実現するための条件について詳しく解説します。

独立後の年収1000万円は現実的に視野に入る水準

結論から言えば、電気主任技術者として独立し、年収(売上)1000万円規模に到達することは、十分に可能です。実際に、独立後にその水準を実現している技術者もおり、会社員時代の収入を大きく上回るケースも珍しくありません。

ただし、独立したからといって自動的に高収入が約束されるわけではありません。会社員のような固定給はなく、収入は自ら受託した電気設備の保安管理業務の件数や契約内容に左右されます。どの現場を、どのくらいの規模で請け負うか。その積み重ねが、そのまま年収に反映される仕組みです。受託件数と契約単価のバランスをどう設計するかが、収入水準を左右するポイントになります。

だからこそ重要になるのが、制度や業界構造への理解です。電気主任技術者の業務は、国家資格に基づく独占性の高い分野であり、誰でも自由に参入できるわけではありません。案件がゼロになるリスクが比較的低く、条件さえ満たせば安定的に仕事を積み上げやすいという特徴があります。

「自分にもできるだろうか?」と不安を感じる方もいるでしょう。しかし、他業種の起業と比べると、資格・制度・需要の三点が揃った電気主任技術者の独立は、再現性の高い選択肢の一つといえます。準備と判断を丁寧に重ねていけば、年収1,000万円というラインは、決して夢物語ではなく、現実的な目標として捉えられるはずです。

電気主任技術者の独立後収支モデル|データで見る利益構造

では、独立後の電気主任技術者は、どのような収益構造で売上を積み上げていくのでしょうか。電気管理技術者として独立した場合の主な収入源は、顧客から受託する電気設備保安管理業務の「委託手数料」です。

収入の上限を決める「換算係数」という仕組み

電気管理技術者が一人で担当できる業務量には、法令による一定の目安が定められています。その管理指標として用いられるのが、いわゆる「換算係数(ポイント制)」です。

一般的な目安として、一人あたりの上限は約33点前後とされており、受託する設備の規模に応じて点数が加算されていきます。

※出典:電気主任技術者制度について(経済産業省)

例えば、高圧受電設備の場合、設備の規模に応じて換算係数が設定され、それに応じた月額の委託料が決まります。受託する設備の容量が大きくなるほど、換算係数は高くなり、1件あたりの契約単価も上がる傾向です。

このように、案件単価と換算係数を組み合わせながら契約を積み上げていくことで、月間の売上規模が形成されていきます。仮に平均的な単価の案件を中心に、換算係数の上限に近い水準まで受託できた場合、年間で1,000万円規模の売上が視野に入るでしょう。

忘れがちな経費と手取りのリアル

ただし、売上がそのまま所得になるわけではありません。独立後は、業務を継続するためにさまざまな経費が発生します。

  • 測定器や試験器の購入費・校正費用
  • 移動用の車両維持費(ガソリン代、車検代)
  • 賠償責任保険料
  • 所属する協会等の会費
  • 消耗品や通信費

これらの必要経費を差し引いた実際の所得は、業務形態や経費構成によって差はあるものの、売上の7〜8割前後となるケースも見られます。経費管理を意識することで、会社員時代と比べて手元に残る金額が増える可能性も考えられるでしょう。

年収1000万円を達成するための条件とロードマップ

数字上は可能だとしても、実際にその水準へ到達するためには、計画的な取り組みが欠かせません。独立後は案件が自然に集まるわけではなく、自ら仕事の取り方や体制を整えていく必要があります。

効率的なエリア戦略の確立

換算係数約33点分の契約を確保するには、複数の事業所を継続的に担当することになります。これらが広範囲に散らばっていると移動時間が増え、点検業務が回りきらなくこともあるでしょう。そのため、

  • 自宅から概ね1時間以内で回れるエリアに集中させる
  • 同一敷地内や近隣の施設をまとめて受託する

といった「エリアを意識した受託戦略」が重要です。移動時間を抑えることは、結果として1件あたりの対応効率を高め、収益性の向上につながります。

信頼関係による紹介案件の獲得

独立直後は、電気管理技術者協会からの紹介や、知人のツテが主な仕事の入口になります。ここで誠実な仕事を積み重ねることで、「あの人に任せれば安心だ」という評判が生まれ、新たな顧客を紹介してもらえるようになります。

営業活動が苦手な技術者であっても、日々の業務を丁寧に遂行し、信頼を積み重ねていくことが、結果として最も有効な営業手法となるでしょう。

独立のメリットとデメリットを天秤にかけてみよう

ここまで収入面を中心にお話ししてきましたが、働き方の面でも大きな違いがあります。お金以外の要素もしっかり比較してみましょう。

  • メリット
    • 働く時間や休日を自分でコントロールできる
    • 定年がなく、健康である限り70代でも現役で働ける
    • 努力した分だけダイレクトに収入に反映される
    • 嫌な人間関係に悩まされることが少ない
  • デメリット
    • 怪我や病気で働けなくなった時の保障が薄い
    • 事故対応などで24時間365日の緊急呼び出しリスクがある
    • 確定申告や請求書発行などの事務作業も自分で行う
    • 孤独を感じることがある

自由には責任が伴いますが、こうした裁量の大きさを、独立という働き方の魅力と捉える人も少なくありません。

成功するために今から準備できる具体的なステップ

もし将来的な独立を考えているなら、今からできる準備があります。いきなり退職届を出すのではなく、着実な土台作りから始めてみましょう。

実務経験の証明書類を確保しよう

独立(電気管理技術者としての開業)には、一定の実務経験が必要です。具体的には、電験三種で5年、二種で4年、一種で3年の実務経験が求められます。

※出典:経産省(近畿保安監督部)

最も重要なのが、この実務経験を証明する書類の準備です。退職してから前の職場にハンコをもらいに行くのは気まずいものですし、会社がなくなってしまうリスクもゼロではありません。在職中のうちに実務経歴書を整理し、必要な証明を確保しておくことが現実的です。

資金と装備の計画を立てよう

開業時には、高額な測定器セットや車両の購入などで、まとまった資金が必要になります。数百万円単位の初期費用がかかることもあるため、会社員のうちに貯金をしておくか、融資を受けられる信用情報を整えておきましょう。

電気主任技術者として広がる、これからのキャリア選択

電気主任技術者の資格は、キャリアの選択肢を大きく広げる専門性です。独立して個人として高い裁量を持って働く道もあれば、組織に属しながら大規模な設備やプロジェクトに関わる道もあります。

独立という選択肢は確かに魅力的ですが、すべての人にとって唯一の正解ではありません。収入面を重視しながらもリスクを抑えたい場合には、資格手当や待遇が整った企業へ転職することも、十分に現実的なキャリアアップといえるでしょう。

大切なのは、あなたがどのような働き方を望み、どのような人生を送りたいかです。電気主任技術者として培った専門スキルを必要としている現場は複数存在しており、その中から自身の価値観に合った道を選択していくことが、長く働き続けるためのポイントになります。


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