「電気主任技術者の具体的な仕事内容を知りたい」
「再エネ業界で働くとSDGsにどうつながるのか気になる」
「資格を取ったあと、どんなキャリアが広がるのか知っておきたい」
そんな思いを持つ方に向けて、現場のリアルから将来の選択肢まで、ひとつずつ整理してお伝えします。
再エネ設備が全国で増え続ける今、電気主任技術者が担う役割はこれまで以上に大きくなっています。太陽光や風力といった発電所を「安全に」「長く」動かし続けることが、地域の暮らしや産業、そして未来のエネルギーを静かに支えているからです。
この記事では、仕事内容・SDGsとの関係・年収・キャリアパスまで、電気主任技術者の仕事を立体的に理解できる内容をまとめました。必要なスキルや未経験からの入り方にも触れているので、あなたがこれからのキャリアを考える上でのヒントになるはずです。
電気主任技術者とは?社会を静かに支える仕事の正体
電気主任技術者の基本的な役割と業務範囲
電気主任技術者は、電気事業法で定められた「電気設備の保安監督者」です。発電所、変電所、ビル、工場などにある電気設備の安全管理を担い、点検や測定、故障対応といった幅広い業務を行います。電気設備を保有する事業者には、法律によって電気主任技術者を選任する義務があるため、現場には欠かせない存在です。資格区分は第一種、第二種、第三種の3つに分かれ、扱える電圧で担当範囲が決まります。
SDGsと電気主任技術者の関係
エネルギーとインフラはSDGsの中でも重要な領域にあたります。電気主任技術者は再エネ設備の安全運転を支え、産業インフラの安定稼働を守り、CO2削減にも貢献します。再エネの普及とインフラ保全の双方から、SDGsの達成を後押しする役割を担う仕事と言えるでしょう。
いま電気主任技術者の重要性が高まっている理由
日本政府は2030年までに再エネ比率を36〜38%へ引き上げる目標を掲げています。全国では設備の増設が続く一方、電気主任技術者は高齢化によって人材が不足し、2030年には約2,000人が不足すると言われています。この需給ギャップにより市場価値は上昇し、資格を持つだけで安定した需要と社会的意義を手にできる状況となっています。
どんな1日を過ごしている?現場で行われているリアルな仕事内容
再エネ設備での主な仕事内容
電気主任技術者の仕事は、再エネ設備を安全に動かすことです。日々の点検や測定で設備の状態を確認し、異常を早い段階で見つけます。発電量の変化から設備の状態を読み取り、必要な対策を取ることで、発電を安定させます。
再エネ設備での仕事内容をもっと深く知りたい方は、こちらの「再エネ業界で活躍する電気主任技術者の仕事とは?」も参考にしてみてください。
点検・巡回で確認する項目
現場では発電機器や配線の状態を目視で確認し、電圧・電流の測定値を基準値と照らし合わせる工程が続きます。太陽光発電所ではパネルの破損や汚れ、配線の劣化、周辺の植生まで丁寧にチェックする姿勢が欠かせません。温度計や絶縁抵抗計も活用し、設備が安全に稼働できる状態かどうかを多角的に見極めていきます。
トラブル対応で求められる判断力
異常を検知した際は、状況を整理しながら原因を素早く把握する姿勢が欠かせません。ブレーカーが落ちた場合は、機器の故障なのか、過負荷によるものなのかを切り分け、安全を最優先に判断を下すことが重要です。復旧後は、再発防止につながる改善点を整理し、次の運転計画へ反映させるところまでが一連の流れになります。
太陽光・風力・ビルなど職場別の違い
勤務先によって仕事内容は大きく変わります。太陽光発電所では広い敷地を巡回し、現場点検と遠隔監視を組み合わせる働き方が一般的です。風力発電所は高所作業が中心で、天候の影響を踏まえた判断が欠かせません。ビルや工場の場合は空調・照明など多様な設備を扱い、基本的に勤務地が固定される働き方が一般的です。
太陽光発電所における1日の仕事の流れ
太陽光発電所で働く1日の流れは、おおむね次のとおりです。
8:00前後:事務所入り
前日の発電量や設備の状態を確認、気になる数値があれば現場で重点的に見るポイントを整理。
9:00頃:現場移動
パネルや配線の状態を実際に見ながら巡回点検。ここでは、破損の有無、汚れ、周囲の植生など、細かな変化に気づくことが大切。
午前中にひと通り巡回を終えると、事務所に戻って測定の結果を整理します。
午後は、必要な測定作業や報告書の作成に取り組む時間です。
13:00頃:資料作り
発電量の推移をまとめたり、点検記録を整えたりしながら、設備の状態を共有するための資料づくりを。
16:00〜17:00頃:振り返りと準備
一日の作業を振り返りつつ、必要な部材の発注や次回点検の段取りを進めるフェーズ。
緊急のトラブルが発生した場合は夜間対応が入ることもありますが、近年は遠隔監視が普及したことで、負担は以前に比べて確実に軽くなりました。
再エネ業界でSDGsに貢献できる理由は?3つのポイントで解説
理由① CO2削減量を数値で実感できるしくみ
電気主任技術者は、自身が管理する設備がどれだけCO₂削減に寄与しているかを数値として把握できます。太陽光発電1MWの年間発電量は約120万kWhとされ、結果として年間約530トンのCO₂削減につながる計算です。一般家庭の年間排出量が約2.5トンであることを踏まえると、5MWの発電所を管理する場合、約1,060〜1,200世帯分に相当する削減効果が期待できます。
つまり、電気主任技術者が行う「異常に気付く」「止めない運転を維持する」という日々の判断は、単なる設備の維持ではなく、社会全体の脱炭素に直結する行動だと言えます。
※「年間約120万kWh/約530トン」という値は、設備利用率や発電効率を前提に算出された参考値です。
※一般家庭排出量の数値参考:環境省「家庭部門のCO₂排出実態統計調査(2022年度)」
発電量レポートを確認するだけで、環境への貢献度が視覚的にわかる点は、再エネ設備ならではの大きな特徴といえるでしょう。
理由② 地域のレジリエンスを支える役割
再エネ設備は、大規模停電が起きたときに地域を支える非常用電源として機能します。ここでいうレジリエンスとは、災害があっても地域が機能を維持し、速やかに立ち直る力のことです。
2011年の震災以降、電源を一か所に集中させない分散型電源の重要性が一段と高まりました。太陽光発電には外部電源がなくても、最低限の電力を生み出せる自立運転が備わっており、2019年の台風15号による千葉県の停電時には、避難所の電力を支えた事例もあります。
こうした非常時に設備を守り、地域を支える役割を担うところに、電気主任技術者の社会的意義が表れます。災害時の暮らしを下支えできることは、大きな誇りにつながるでしょう。
理由③ 次世代に残せるインフラづくりに関わる
再エネ設備の寿命は20〜30年とされ、今手がけている設備は、次の世代が社会で生活する頃まで稼働し続ける可能性があります。
電気主任技術者の役割は、単に設備を管理するだけではありません。未来に向けて長く機能するインフラを維持し、その価値を次の世代へ引き継いでいく役割も担っています。
仕事に必要なスキルと適性を解説(未経験向け)
求められる3つのスキル
電気主任技術者に求められる力は、難しい知識だけに限られません。現場の安全を守るための、基本的かつ実践的なスキルが重視されます。
電気主任技術者に必要なスキルについて、より詳しく知りたい方は「電気主任技術者に求められるリアルなスキルとは」の記事も参考になります。
基本的な電気知識と読図力
電気の基礎知識に加え、図面を読み取る力が求められます。電圧や電流の関係を理解し、配線図や仕様書から設備の構造を把握する力が不可欠です。複雑な理論よりも、現場で起きている事象を正確に読み取る実践的な知識が活きてきます。
状況を整理して判断する力
トラブルが発生した際は、情報を整理して原因を見きわめる力が欠かせません。機器の挙動や測定値の変化、過去の記録を順に確認しながら状況を整理します。慌てず、落ち着いて安全を最優先に判断する姿勢が重要です。
関係者とのコミュニケーション力
現場では、管理部門・工事会社・メーカーなど多様な関係者と連携しながら業務を進めていきます。専門用語だけに頼らず、相手に届く言葉で説明する姿勢が欠かせません。再エネ設備では自治体や地域との調整が求められる場面も増えており、技術を伝える力が業務品質を左右する大きなポイントとなります。
現場で活きる3つの適性
スキル以上に、仕事への向き合い方が成果を大きく左右します。
1つ目は、安全を最優先に考える慎重さです。小さな違和感にも気づき、念のため確認する姿勢が事故を未然に防ぎます。
2つ目は、変化に合わせて学び続ける柔軟さです。再エネ設備やデジタル技術は進化が速く、新しい知識を吸収する意欲が欠かせません。
3つ目は、社会に役立ちたいという気持ちです。インフラを支える誇りを持ち、現場で腰を据えて働ける人は長く活躍しています。
文系出身者でも活躍できる理由
電気主任技術者は理系の仕事という印象がありますが、文系出身者も多く活躍しています。電験三種の合格者には、非電気系出身者も一定数含まれています。
文系出身者の強みは、文章の読解力です。特に法規科目では、条文の意味を正確に掴む力が大きく役立ちます。学習計画を立てて進める管理能力や、現場でのコミュニケーション力も評価されるポイントです。基礎から学べば十分に対応できる領域なので、文系だからと躊躇する必要はありません。
電気主任技術者が再エネ分野で働く魅力とやりがい
SDGsへの貢献を実感できる3つの場面
電気主任技術者として働く中で、SDGsへの貢献を実感できる場面はいくつもあります。成果が数値として表れ、現場の反応として返ってくるため、社会とのつながりをつかみやすい仕事です。
1つ目は、発電量レポートを確認したとき。設備が生み出した電力量や削減できたCO2量が数字として示され、環境保全への貢献度を明確に把握できます。
2つ目は、設備トラブルを未然に防げたとき。発電を止めずに安定供給を維持でき、地域の暮らしや産業を支えている手応えが生まれます。
3つ目は、地域の人と関わった瞬間です。停電時に電力を届けられた経験や、イベントで再エネを説明した際の感謝の言葉など、社会の役に立っていることを肌で感じられる場面があります。
電気主任技術者のやりがいや魅力については、「電気主任技術者が今アツい5つの理由」でも詳しく解説しています。
職場別の年収相場
電気主任技術者の年収は、勤務先や経験年数によって大きく幅があります。未経験(電験三種取得済み)の段階では400万〜450万円が目安となり、実務経験を3年以上積むと500万〜650万円のレンジに入るケースが一般的です。管理職やリーダー層では700万〜800万円台に届き、大手企業で電験一種の資格を活かすポジションに就いた場合は、900万円を超える例も見られます。
再エネO&M企業は業界全体が成長局面にあり、昇給のチャンスが多い傾向です。電力会社や大手インフラ企業は福利厚生が充実しており、安定した環境で働ける点が魅力。ビル管理会社は勤務地が固定されるため、ワークライフバランスを優先したい人に向いています。また、複数の発電所を担当するフリーランスとして活動する働き方では、600万〜1,200万円を目指せるケースもあります。
日本の民間平均年収が458万円であることを考えると、安定性と将来性の点で魅力の大きい職種といえるでしょう。
年収についてさらに詳しく知りたい場合は、「電気主任技術者の年収はどのくらい?」の記事も参考になります。
資格手当・福利厚生の実態
企業によっては、資格保有者への手当が設定されています。種別によって金額差がある場合もありますので資格の取得がそのまま収入に反映されやすい点は大きな魅力といえるでしょう。
福利厚生の面でも、資格取得支援や研修制度を充実させる企業が増えてきました。受験費用の補助や合格時の報奨金を設ける会社もあり、スキルアップを後押しする仕組みが整いつつあります。また、リモートワークと現場勤務を組み合わせる働き方を導入する企業もあり、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を選びやすい環境が広がっています。
電気主任技術者のキャリアパスを解説
年代別のキャリアステップ
電気主任技術者としてのキャリアは、経験に応じて段階的に広がっていきます。入社1〜3年目は、先輩からの指導を受けながら、日常点検や記録管理の基礎を習得する時期です。この段階で身につく設備の挙動やトラブル対応の感覚が、その後の成長を支える土台になります。年収は400万〜500万円前後が一般的な水準です。
入社4〜7年目になると、複数の発電所を担当し、若手指導を任される場面も増えてくる頃。点検計画の立案や外部業者との調整など、業務の幅が一段と広がるタイミングです。年収はおおむね500万〜650万円のレンジに入ります。
入社8年目以降は、管理職として組織を率いる道と、フリーランスとして独立する道が現実的な選択肢に。管理職の場合はO&M部門を統括し、年収700万〜900万円が狙えるポジションに就くケースが増えます。独立の道では複数の選任契約を組み合わせ、600万〜1,200万円に届く収入を得ることも可能です。
キャリアパスをさらに深掘りした内容は、「電気主任技術者のキャリアパスと取得ルート」で詳しく紹介しています。
再エネ業界で広がる3つの活躍フィールド
再エネ分野の拡大に伴い、電気主任技術者の活躍領域も多様になってきました。
1つ目は、O&M企業での現場管理。太陽光・風力発電所の巡回を中心に、設備の状態を把握し安定稼働を支える役割です。
2つ目は、事業開発部門での技術支援。新設発電所の立ち上げに携わり、設計段階から安全性や仕様の妥当性を確認します。
3つ目は、コンサルタントとしての独立。保安規定の作成や設備診断など、専門知識を生かした技術支援を行う働き方です。
管理職・独立を目指す場合のポイント
管理職を目指す場合は、技術力に加えてマネジメント力が求められます。若手育成、予算管理、関係者調整など、組織全体を見渡す視点が欠かせません。研修参加やプロジェクトリーダー経験を積むことで、マネジメントの基盤が整っていきます。
独立を目指す場合は、複数の選任契約を獲得する営業力が重要です。地域のネットワークや信頼が案件につながるため、地場での関係構築が大きな武器になります。第二種・第一種など上位資格を取得することで対応範囲が広がり、収入の伸びしろも大きくなります。
どちらの道でも、電気主任技術者は長期的に安定したキャリアを築きやすい職種です。
キャリア全体像が見えたら、次に考えたいのは「どうやってこの道に進むか」という点。未経験から始める場合のステップを次の章で紹介します。
未経験から電気主任技術者を目指す具体的な方法
電験三種の試験概要と合格率
電気主任技術者をめざす最初のステップは、電験三種(第三種電気主任技術者試験)に合格することです。試験科目は「理論・電力・機械・法規」の4つ。それぞれ60点以上の得点が必要になります。合格率は毎年8〜10%ほどで、国家資格の中でも難易度が高めといわれています。
ただし、科目合格制度のおかげで、一度に4科目すべてに合格する必要はありません。3年以内に4科目をそろえればよいため、働きながらでも計画的にクリアできます。未経験者にとっては、大きな支えになる制度といえるでしょう。
効率的な勉強方法と教材の選び方
未経験から学ぶ場合、最初の課題は「基礎理解」です。図解が豊富なテキストを選ぶと、設備構造や計算の流れがつかみやすくなります。オンライン講座や動画教材を併用すると、つまずきやすい部分も理解しやすくなるはずです。
学習の中心は、過去問演習。過去10年分を繰り返し解くと、出題パターンが自然と見えてきます。理解が曖昧な部分はテキストに戻って復習し、再度問題へ。このサイクルが定着すると、実力が伸びやすくなります。
1日2時間の学習を1年間続けられれば、科目合格は十分に射程に入ります。電験三種の勉強方法については、「未経験から合格した人の勉強法まとめ」も参考になります。
未経験者が最短でキャリアを築く3つのステップ
未経験から電気主任技術者としてキャリアを築くなら、次の3ステップが効率的です。
ステップ1:電験三種の取得(1〜2年)
まずは資格取得に集中します。科目合格制度を活用し、取り組みやすい科目から進めることで負担を抑えられます。
ステップ2:実務経験を積む(設備管理会社へ就職)
資格を取得したら、O&M企業や設備管理会社で現場経験を積みます。点検・測定の基本に加えて、トラブル対応の感覚が磨かれる時期。先輩のサポートを受けながら業務を習得できるため、未経験でも安心してスキルを伸ばせます。
ステップ3:キャリアアップ(上位資格・専門領域を確立)
実務経験を重ねたら、第二種・第一種への挑戦や再エネ分野への特化によって、収入面・仕事内容の幅が大きく広がります。
未経験からでも、計画的に学習と経験を積み重ねれば、電気主任技術者として将来性のあるキャリアを十分に描けます。
再エネ分野で長く活躍できる未来が、ここにある
電気主任技術者は、電気設備の安全を守りながら再エネ設備の安定稼働を支える専門職です。社会インフラを支えるだけでなく、CO2削減や地域レジリエンスの向上など、SDGsへの貢献を実感できる魅力があります。
再エネ業界の拡大に伴い、今後も需要は確実に増えていく見通しです。安定した収入やキャリアの広がりを考えると、長期的に働きたい人にとって非常に有望な選択肢といえるでしょう。
未経験からでも、資格取得と現場経験を重ねれば、電気主任技術者として確かなキャリアを築いていけます。一歩ずつ着実に進めば、再エネ分野で社会に貢献できる未来がしっかり見えてきますよ。
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