電気主任技術者として現場に立つ際、私たちの右腕となるのが測定器や工具類です。目に見えない電気の状態を正確に把握し、設備の安全を守るためには、信頼できる「相棒」の存在が欠かせませんよね。
プロの現場では、単に計測ができれば良いというわけではなく、耐久性や操作性、そして何より測定値の信頼性が極めて重要視されます。実際にベテランの技術者がどのような道具を使い、どのような基準で選んでいるのか、気になったことはありませんか。
この記事では、電気主任技術者の「七つ道具」とも呼べる必須の測定器と工具を詳しく紹介します。これから道具を揃える未経験の方から、装備のアップデートを考えている現役の方まで、ぜひ参考にしてみてください。

電気主任技術者が現場で必ず持ち歩くべき基本の測定器
電気保安の現場において、測定器は「目」の代わりとなる最も重要な道具です。これらがなければ、漏電や電圧異常を察知することはできません。
まずは、どのような現場でも必ずと言っていいほど登場する基本の測定器を確認してみましょう。
電圧確認の基本となるデジタルマルチメータ
テスターとも呼ばれるデジタルマルチメータは、電圧、抵抗、導通などを確認するために欠かせません。
現場では高い電圧を扱うこともあるため、安全性を示すカテゴリー(CAT)を確認して選ぶのがプロの鉄則です。最近では、暗い盤内でも数値が見やすいバックライト付きや、落としても壊れにくい耐衝撃性に優れたモデルが人気です。
活線状態で電流を測るクランプメータ
回路を切断することなく、電線を挟むだけで電流を測定できるクランプメータも必須のアイテムです。
負荷電流の測定はもちろん、微少な漏れ電流を測定できる「リーククランプ」は、絶縁不良の早期発見に威力を発揮します。これひとつでトラブルの予兆を掴めることもあるため、精度にはこだわりたいところでしょう。
設備の健康状態を測る絶縁抵抗計(メガー)
電気設備が安全に使用できる状態かを判断する「絶縁抵抗」を測定するための道具です。
点検時には複数の回路を効率よく測定する必要があるため、片手で操作しやすいスイッチ付きのリード線を採用しているモデルが重宝されます。125Vから1000Vまで、対象設備に合わせて電圧を切り替えられるタイプを用意するのが一般的です。
作業効率と安全性を高める現場愛用の工具類
測定器が「目」なら、工具は「手」です。確実な点検作業を行うためには、使い勝手の良い工具が欠かせません。
プロが腰道具に忍ばせている、こだわりの工具たちを見てみましょう。
盤の開閉から端子の増し締めまでこなすドライバー
電気主任技術者の基本中の基本と言えるのがドライバーです。
電気点検作業では、感電リスクを低減するため、絶縁性能を有するドライバー(IEC規格等に準拠した製品)を使用するのが一般的です。ネジのサイズにぴったり合うものを選ぶことで、ネジ頭を傷めずに作業できます。貫通ドライバーは、通電の可能性がある作業では危険を伴うため、用途に応じて正しく使い分けることが大切です。
狭い場所での点検を支える高輝度フラッシュライト
キュービクル内部や天井裏など、電気点検の現場は暗所が非常に多いものです。
両手が自由に使えるヘッドライトと、細部を照らせる強力なハンドライトを併用するのが成功者のスタイルでしょう。最近はUSB充電式で非常に明るいLEDライトが普及しており、点検効率を大きく向上させてくれます。
接地抵抗計や検電器といった特殊な道具たち
接地工事が有効に機能しているかを確認する接地抵抗計や、電路に電気が来ているかを確認する検電器も忘れてはいけません。
特に検電器は、作業者の命を守るための重要な安全確認手段の一つです。非接触で音と光で知らせてくれるタイプは、感電事故を防ぐための必須装備と言えますね。

プロが測定器や工具を選ぶときに重視する3つのポイント
道具を揃える際、何を基準に選べば良いのでしょうか。長く愛用できる道具選びの秘訣をまとめてみました。
測定値の信頼性とメーカーの校正体制
測定器選びで最も大切なのは、その数値が「正しい」と確信できることです。
国内の定番メーカー(日置電機、共立継器など)が愛用される理由は、精度はもちろんのこと、修理や校正といったアフターサポートが充実しているからです。正確な測定値は、電気主任技術者としての信頼に直結します。
過酷な現場環境に耐えうる堅牢性と操作性
電気保安の現場は、屋外の暑さや寒さ、時には雨の中での作業になることもあります。
- 防塵・防水性能(IP等級)が高いか
- 手袋をしたままでもボタン操作ができるか
- 液晶画面の視認性は良いか
これらの実用性を重視して選ぶことで、いざという時に「道具が使えない」というトラブルを防ぐことができます。
長時間の作業でも疲れにくい携帯性と重量
点検は数時間に及ぶこともあります。腰道具が重すぎると腰痛の原因にもなりかねません。
最近は、多機能でありながら軽量コンパクトな設計の測定器が増えています。必要な機能を備えつつ、自分の体に負担の少ない装備を組むのが、長く現役で活躍し続けるポイントでしょう。
測定器と工具の適切なメンテナンスが事故を防ぐ
せっかく良い道具を揃えても、手入れを怠っては意味がありません。プロが行っているメンテナンスの習慣を確認しましょう。
定期的な点検と電池の管理を徹底しよう
測定器の多くは電池で動いています。肝心な時に電池切れにならないよう、予備の電池を常に携行しておくのがプロのたしなみです。
また、測定リード(テストリード)の断線や被覆の傷は、感電や短絡事故の原因になります。作業前には必ず道具の外観チェックを行う習慣をつけましょう。
正確な測定を担保するための定期的な校正
測定器は使用状況によって誤差が生じる可能性があるため、メーカーや業界の推奨に基づき、定期的な校正を受けることが望ましいとされています。校正証明書が付随する測定器を使用することは、測定結果の信頼性を高めるだけでなく、自身の業務品質を担保するうえでも有効です。
最新の測定器が変える電気保安の未来図
最近では、スマート保安の普及に伴い、測定器も大きな進化を遂げています。
Bluetooth連携でスマートフォンにデータを記録
近年では、測定データをBluetoothなどで端末に記録できる測定器も登場しており、点検記録の効率化やデータ管理の面で活用される場面が増えています。
測定データを電子的に記録できることで、手書きメモの負担を軽減できる場合もあり、報告書作成の効率化につながる点は大きなメリットと言えるでしょう。また、データの管理性が向上することで、点検結果の比較や履歴確認が容易になり、保守点検の質向上に寄与すると考えられています。
サーモグラフィカメラによる非接触の異常発見
サーモグラフィは、設備の表面温度を可視化することで、接触不良などによる異常発熱の兆候を非接触で把握できる手法として活用されています。
離れた場所から異常発熱の兆候を把握しやすくなるため、点検作業の安全性向上に寄与します。こうした最新機器を使いこなすことで、点検の幅が広がり、技術者としての対応力向上にもつながるでしょう。

道具を使いこなして、あなたの新しいキャリアが待っています
ここまで、電気主任技術者が現場で愛用する道具について解説してきました。
お気に入りの道具を揃え、それらを使いこなして設備の安全を守る姿は、専門職ならではのやりがいと言えるでしょう。まずは基本的な道具に触れ、その扱いに慣れることから始めてみてはいかがでしょうか。
確かな道具と技術を身につけることで、再生可能エネルギー施設や重要インフラの現場など、活躍の場は広がっています。道具へのこだわりは、仕事への誇りそのものです。自分なりの「七つ道具」を揃え、電気保安の世界で新しい一歩を踏み出しましょう。
