「電験三種は取ったけど、実務経験がないから選任にはなれない…」
そんな不安を抱える資格保有者の方は少なくありません。
しかし近年では、再エネO&M業界を中心に、実務未経験者が“選任技術者”へと成長できる環境が整いつつあります。
ここでは、実務経験ゼロからO&Mの選任者になるまでのリアルな道のりを紹介しながら、「何をすればそこに辿り着けるのか」を具体的に解説します。
スタートラインは「電験三種+実務経験を積む意志」
資格を取得しただけでは選任されることはできませんが、選任のための実務経験は「現場で何をしたか」によってカウントされます。
O&M業界では、
- 発電所の巡視・点検
- 故障時の対応記録
- 運転状況の分析・報告
といった日常業務の積み重ねがすべて「実務経験」に該当します。
電気主任技術者として実務経験を効率的に積むには、日々の業務に対する「意識の持ち方」と「関わり方」が非常に重要です。たとえば発電所の巡視・点検では、単なる作業としてこなすのではなく、設備ごとの特性や経年劣化の傾向、異常兆候の前兆などを自ら観察・記録し、設備の“癖”を読み取る力を養う姿勢が求められます。
また、故障対応の現場では、単に記録を残すだけでなく、なぜそのトラブルが起きたのかを原因分析し、予防策を考えるところまで踏み込むことで、実務スキルが一段階深まります。
さらに、運転状況のデータ分析や報告書作成においては、数字の裏にある運転傾向や設備の状態変化を読み取り、上司や関係者と共有・提案することで、自らの考察力やコミュニケーション力も鍛えられます。単なる作業の積み重ねではなく、常に「自分の手で設備を守る」という視点を持って関わることが、効率的かつ実践的な経験の積み方につながります。
企業によっては、実務経験証明の作成支援やキャリア管理の仕組みもあり、着実にステップアップが可能です。
入社1年目から任される“実務経験の宝庫”
再エネO&M企業では、入社初年度から実務に関わる業務を担える仕組みが整っています。例として、以下のような流れがあります:
入社1ヶ月:先輩同行で点検補助・機器名称の把握
入社3ヶ月:チェックリストに沿って自主点検、データ収集業務
入社6ヶ月:レポート作成、異常報告対応、業者連絡の一部担当
入社1年:点検計画や設備改善提案なども一部担当
会社によって経験の機会や幅は異なりますが、こうした過程で自然に実務経験が蓄積され、1〜3年で外部選任が可能なレベルまで成長するケースも多くあります。
選任への“あと押し”をしてくれる制度・文化
実務経験を積むことに加え、選任への道を後押しする仕組みがあるかどうかも重要なポイントです。
電気主任技術者の選任を目的とした育成プログラム、指導担当制度(社内メンター)、実務経験年数の管理・記録支援、外部講習会・模擬点検の実施…こうしたサポートがある企業を選べば、「気づいたら実務が足りていた」「社内推薦で選任された」という流れも十分に現実的です。
「資格はあるけど経験がない」──それは、O&M業界では決してハンデではありません。
むしろ、“学びながら実務を積める環境”に飛び込むことが、最速で選任者になるための第一歩です。