電気主任技術者の世界にも、大きな変革の波が押し寄せています。これまで人の目と手で行われてきた点検業務が、ドローンやAIといった最新テクノロジーと融合し、「スマート保安」として進化しているのです。

「AIに仕事を奪われるのではないか」と不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、現実は逆です。新しい技術を使いこなすことで、電気主任技術者の価値はこれまで以上に高まろうとしています。

この記事では、スマート保安の最前線と、そこで求められる次世代の技術者像について詳しく解説します。

ドローンとAIが変えるスマート保安の基本を理解しよう

真夏の太陽光発電所や、高所に設置された風力発電設備。電気主任技術者の仕事は、こうした過酷な環境と常に隣り合わせです。広い敷地を歩き回り、一枚一枚の設備を確認する点検作業には、時間だけでなく体力や安全面の負担も伴ってきました。こうした現場の課題を背景に、近年注目を集めているのがスマート保安です。スマート保安とは、IoTやAI、ドローンといったデジタル技術を活用し、設備保安の安全性と効率性を高めていく取り組みを指します。

例えば、ドローンを使った上空点検では、人が立ち入りにくい場所でも、短時間で全体の状況を確認できます。赤外線カメラによる撮影によって、太陽光パネルの異常発熱、いわゆるホットスポットも把握しやすくなりました。従来と比べて、点検の精度が着実に高まっていると言えるでしょう。また、センサーから得られるデータをAIを活用して継続的に分析し、異常の兆候を把握する仕組みもすでに実務の中で活用され始めています。

重要なのは、これらの技術が技術者の仕事を置き換えるものではないという点です。現場で培われた経験や判断力を土台に、テクノロジーが「見る」「気づく」「補助する」役割を担うことで、保安業務全体の質を高めていく。それが、スマート保安が目指す姿だといえるでしょう。

労働力不足の解消にスマート保安が注目される理由

電気保安業界でスマート保安が注目されている背景には、避けて通れない構造的な課題があります。それが、技術者の高齢化と慢性的な人材不足です。日本全体の人口構成を見ても、現役世代が減少し、ベテラン層の割合が年々高まっていることは明らかです。

電気保安の分野も例外ではなく、高度経済成長期にインフラ整備を支えてきた世代が次々と引退を迎えています。一方で、新たに資格を取得し、現場を担う若手技術者の数は十分とは言えません。このまま人材不足が進めば、既存設備を安全に維持管理すること自体が難しくなる――そうした危機感は、すでに現場レベルでも共有され始めています。

こうした状況の中で、限られた人数でも保安の質を維持・向上させる手段として期待されているのがスマート保安です。ドローンや遠隔監視の活用により、移動や点検にかかる時間を削減し、高所や立ち入りが困難な箇所の外観点検など、危険性の高い作業は、ドローン等の機器で代替・補完する。その結果、電気主任技術者は設備全体を見渡し、「判断」や「高度な技術対応」といったコア業務に集中できるようになります。

私たちは、スマート保安を単なる省力化の手段とは捉えていません。労働力不足という制約が強まる中で、電気主任技術者の専門性を将来にわたって発揮し続けるための基盤。それが、スマート保安の本質的な役割だと考えています。

従来型とスマート保安の業務スタイルの違いの比較

スマート保安の導入によって、電気保安の現場業務は大きく変わりつつあります。従来型の保安業務とスマート保安導入後の業務スタイルを比較し、その違いを整理してみましょう。

比較項目従来型の保安業務スマート保安導入後の業務
点検手段徒歩巡回、目視、手動計測ドローン撮影、IoTセンサー、遠隔監視
データ管理紙の帳票、手書き記録クラウド保存、デジタルデータ化
異常検知現場での発見、定期点検時遠隔監視技術やAIの活用による常時監視・異常兆候の把握
技術者の役割現場作業、体力的な巡回データ分析、不具合箇所の特定と判断
移動時間現場への移動が多い遠隔確認により移動を大幅削減

この比較から見えてくるのは、単なる作業効率の違いではありません。従来型の保安業務では、技術者は現場を巡回し、異常を「見つけにいく」役割を担っていました。一方、スマート保安では、センサーやAIによって集まる情報をもとに、異常の兆しを「読み取り、判断する」役割へとシフトしています。

今後、こうした業務スタイルの変化はさらに進み、電気主任技術者には「点検する人」ではなく、「設備の健全性を診断する存在」としての役割が、より強く求められていくでしょう。

データを操る司令塔としての新しい働き方の実態

スマート保安という言葉から、ドローンの操縦やAIの操作を想像する人も少なくありません。しかし、電気主任技術者に求められる役割は、そうした技術を「使いこなす」ことではなく、そこから得られる情報をどう判断するかにあります。

ドローンが撮影した赤外線画像を見て、それが単なる汚れなのか、内部の異常を示すものなのかを見極める。センサーが示す電流値のわずかな変化から、設備内部で起きている兆候を読み取る。AIが検知したアラートに対して、即時対応が必要なのか、経過観察で問題ないのかを判断する。こうした判断は、電気の知識と現場経験を積み重ねてきた電気主任技術者にしか担えない領域です。テクノロジーは状況を「見える化」する役割を果たしますが、最終的に安全を守る責任と判断は、人が担います。

スマート保安の普及によって、技術者は現場作業に追われる立場から、設備全体の状態を把握し、適切な判断を下す司令塔の役割へとシフトしていきます。これは、業務の負担が軽くなるという話ではありません。専門性と判断力が、これまで以上に価値を持つ働き方へと変化していることを意味しています。

テクノロジーとの共存で広がる将来性とキャリアの可能性

スマート保安の普及は、電気主任技術者のキャリアにも前向きな変化をもたらしています。デジタル技術を単なる補助ではなく、業務を支えるツールとして活用できる技術者は、今後ますます重要な存在になっていくでしょう。

特に再生可能エネルギー分野では、広い敷地に分散する発電設備を効率的に管理するため、スマート保安の導入が欠かせません。遠隔監視やデータ活用を前提とした体制が整うことで、結果として業務範囲や担う役割が広がることで、評価の対象となる領域が拡大しています。
また、現場を巡回する負担が軽減されることで、年齢を重ねても知識と経験を活かし続けられる点も大きな特長です。これまで体力面に不安を感じていた技術者にとっても、スマート保安は長期的なキャリアを描くための有力な選択肢となりつつあります。

テクノロジーと共存しながら専門性を発揮する。それは、電気主任技術者という仕事の将来性を広げる、新しい働き方の一つと言えるでしょう。

新しい技術を味方につけて広がる専門性の価値

スマート保安は、電気主任技術者の仕事を奪うものではありません。むしろ、これまで時間や労力を要していた単純作業をテクノロジーが担うことで、技術者が本来の専門性を発揮できる環境を整える取り組みだと言えます。

ドローンやAIによって収集された情報をもとに、設備の状態を読み解き、適切な判断を下す。そうした役割は、電気の知識と現場経験を持つ技術者にしか担えません。スマート保安の普及は、「ハイテク×電気」という新しい専門性を持つ技術者の価値を、より明確にしています。変化のスピードが速い時代においても、電気の基礎知識は揺るがない土台です。その土台があるからこそ、新しいツールを取り入れながら、役割や活躍の場を広げていくことができます。

テクノロジーと共存し、専門性を磨き続ける。それが、これからの電気保安の現場で求められる技術者像であり、将来にわたって価値を発揮し続けるための一つの道筋だと、私たちは考えています。


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