どれだけ丁寧に点検していても、電気設備の現場では思わぬトラブルが起きることがあります。
重要なのは、その原因と向き合い、次に同じことが起きないように備えること。
この記事では、実際によくあるトラブルの事例を紹介しながら、対応策と予防のヒントをお伝えします。
受電設備の絶縁劣化による漏電事故
異臭や異音に気づいたら、すぐ対応を
高圧受電設備のケーブルや端子部が経年劣化し、絶縁が低下することで漏電事故が発生することがあります。実際、点検時に「焦げたような臭い」や「ブーンという異音」に気づいて確認したところ、絶縁破壊寸前だったという事例もあります。
このような場合、すぐに設備を停止し、メガー(絶縁抵抗計)による測定と、部品の交換対応が必要です。予防のためには、温度の異常や変色のチェック、定期的な絶縁抵抗測定を欠かさず行うことが基本です。
電気主任技術者だから発見できた電気事故防止事例集
https://denkihoan.org/en/wp/wp-content/uploads/2016/11/safe_case.pdf?utm_source=chatgpt.com
変圧器のオイル漏れによる火災リスク
見逃しやすい“にじみ”に注意
変圧器は内部に絶縁油が使われており、パッキンの劣化などで微細なオイル漏れが生じることがあります。初期段階では「にじみ」程度で目立ちませんが、そのまま放置すると発火リスクにつながる重大な事故になります。
点検の際には、外装の汚れやにじみの跡をよく観察し、小さな変化にも敏感であることが大切です。もし発見したら、早めのオイル補充やパッキン交換、専門業者の診断を依頼しましょう。
キュービクル内での過熱トラブル
夏場は特に注意!温度上昇の兆候を見逃さない
屋外に設置されたキュービクル(高圧受電設備)内は、夏場になると内部温度が高温になり、機器の過熱が発生することがあります。とくに負荷が大きい時期には、配電盤やブレーカーの異常発熱に注意が必要です。
サーモグラフィーカメラなどを活用して、機器ごとの温度傾向を把握しておくと、異常の早期発見につながります。また、通気口の清掃や日よけ対策など、外的要因への備えも有効です。
漏電ブレーカーの誤作動とその背景
原因は設備じゃなく“環境”かもしれない
ある施設で、漏電ブレーカーが何度も落ちるトラブルが発生しました。原因を探ると、床が水浸しになっていた場所で延長コードが使用されており、湿気と接地不良による感電防止機能が働いていたことがわかりました。
こうしたケースでは、設備自体の問題ではなく「使用環境」が要因となっている場合もあります。現場の清掃状況や配線の扱い方など、日常的な安全意識がトラブル防止には欠かせません。
電気事故情報(令和6年度)
https://www.safety-kinki.meti.go.jp/electric/accident/r6/index.html?utm_source=chatgpt.com
トラブルは“想定外”の連続。でも防げる
小さな違和感に、どう向き合うか
現場でのトラブルの多くは、初動での“気づき”と“判断”で防げることも少なくありません。「なんとなくおかしい」という違和感を放置せず、きちんと確認する姿勢が、結果として事故を防ぐことにつながります。
また、事例をチームで共有し「うちは大丈夫」で済ませない空気づくりも大切です。経験の蓄積と情報のオープン化が、現場の安全文化を育てていきます。