「保安規定って結局、何をするの?」

電気主任技術者の仕事を調べていると、必ず出てくる言葉があります。
それが「保安規定」。

でも、この言葉、実際に働いたことがないと、かなりイメージしづらいのではないでしょうか。
「点検ルールのこと?」「法律で決まってるの?」「難しい書類仕事?」
どれも間違っていませんが、それだけでは説明しきれません。

今回は、太陽光発電所の現場で、電気主任技術者がどんなふうに保安規定と向き合っているのかを、具体的に解説します。

保安規定とは、「安全と継続の設計図」である

保安規定とは、電気事業法に基づいて作成・提出が義務付けられている、設備運用上のルールブックです。

誰が点検をするのか、いつ何を確認するのか、異常が起きたときにどう対応するのか。
そのすべてを記した“オペレーションの中核”が保安規定です。

言い換えれば、これは「この発電所を安全に、止めずに運用するための設計図」です。

電気主任技術者が担う「保安規定」の仕事とは

一言でいえば、「作って、守って、見直す」こと。
具体的には次のような業務を担当します。

まず、発電所が完成する段階で、保安規定を作成します。
発電設備の規模、構成、設置場所に応じて、点検周期や報告手順を設計します。

次に、保安規定に沿った日常点検・月次点検・年次点検を実施。
点検記録や異常履歴を保存し、必要があれば報告します。

そして、実際の運用の中で、「この点検は現場に合っていない」「改善できる部分がある」と感じたら、保安規定そのものを見直す。
これらが、主任技術者の重要な業務です。

保安規定で決められること

保安規定には、以下のような項目が盛り込まれます。

・保安管理体制(誰が、どの役割を担うか)
・点検周期(毎日・月次・年次など)
・点検内容(どの設備に対して、どんな検査を行うか)
・測定項目(絶縁抵抗、接地抵抗、動作確認など)
・記録・報告の様式と保存方法
・異常時の対応フロー
・外部委託する業務の範囲と管理責任

これらを発電所ごとに設計する必要があるため、テンプレートをそのまま使うことはできません。

現場でありがちな誤解

保安規定は「紙の書類」だと思われがちです。
もちろん法令上の提出書類であることは事実ですが、現場ではむしろ「実務マニュアル」としての意味が強くなっています。

たとえば、規定に「異常を発見した場合、関係部署に24時間以内に報告」とあっても、実際に連絡体制が整っていなければ意味がありません。

そのため、主任技術者は「ルールを作るだけ」でなく、「現場で実行できる形」に落とし込む力が求められます。

改定と改善が重要になる理由

太陽光発電所の設備は、時代とともに変化します。
たとえば、遠隔監視装置が導入された、PCSが新型に入れ替わった、新たに蓄電池が併設された──
こうした変化があった場合、保安規定も必ず見直す必要があります。

また、異常対応の履歴から「同じエラーが3回発生している」などの傾向が見えたときも、定期点検の対象を増やす・測定方法を変更するなどの調整が必要になります。

この「改善サイクル」を回していくことこそ、主任技術者の技量が問われる場面です。

一日を通しての仕事例

朝、事務所にて前日の監視データを確認。PCSに一時的な出力低下があったことをログから発見。
定期点検の際に現地で確認し、原因がファン詰まりであると判明。点検記録に残し、同様のトラブルが他でも起きていないかを保安記録から検索。

過去の履歴と突き合わせた結果、「点検周期をもう少し短くすべきではないか」という判断に至る。
保安規定の該当部分を関係者に共有し、改定提案書を作成。

このように、点検・判断・記録・改善の流れをリードするのが、主任技術者の仕事です。

まとめ

保安規定とは、単なる書類作業ではありません。
それは、現場の安全を守り、発電を止めずに続けるための「知恵の集積」であり、
現場を知る電気主任技術者だからこそ、価値あるものにできる領域です。

資格を持つだけでなく、それをどう現場で活かし、安全と効率を両立させるか。
その力が、再エネ業界で本当に求められているスキルです。